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トラッドクライミングの申し子レオ・ホールディングを核とするクライミングチームが、北極圏にあるビッグウォール「アスガルド」にフリークライミングとベースジャンプを駆使して挑んだ壮大なプロジェクトを追った作品。記録映像と呼ぶにはあまりに美しく、むしろ映画と形容すべき素晴らしい映像作品に仕上がっています。
ヒューマンドキュメンタリーとしての要素も色濃く、全編日本語字幕付きということもあり、出演するクライマー達の心の動き、叫び、嘆き、悦びを実感できるのこともこの作品の魅力です。
スペインでのスピードフリー、ヨセミテのビッグウォールフリー、そしてベースジャンプトリップなど、アスガルドプロジェクトに求められる全てのファクターをトレーニングで自分達のものにしていく過程。そして、ひたすらに過酷なアスガルドウォールのクライミングシーンが完結するとき、思わず熱いものがこみあげてくるような大きな感動を与えてくれます。
プロデューサーはリール・ロック・ツアーなど数々の映画祭受賞歴を持つAlastair Lee。この作品も2009年に英国で開催されたKendai Film Festivalなどの映画祭でも賞を獲得しています。
インディアンフェイス(E9/6C 5.13a/X)は長らく再登者がでていない。このルートにはRhapsody(E11)の初登で有名なデイブ・マクロードも近年トライしているが、再登には至らなかったという。
冒頭から映像の美しさと迫力に圧倒される。それに続くスペインのビッグウォールのタイムトライアル、イタリアでの1300mのベースジャンプ、ヨセミテでのワンデイアッセントといった「アスガルド」へ向けたトレーニング3連発は、それだけでも1本の作品になりそうな充実したコンテンツで、ずっとテンションが上がりっぱなし。
そして、いよいよ本命の「アスガルド」。飛行機から荷物を落とし、続いてクライマーたちがダイブして目標の壁に向かうシーンは、ドキュメンタリー映画というより、ハリウッドのアクション映画を思わせるド迫力の映像は、ビッグなプロジェクトを予感させる。
ギアの破損、落石、天候不順、低温、負傷と、困難を極める壁で、ボロボロになりながら何度もフリーでの突破を試みるレオたちも凄いが、それをずっとビデオカメラで追い続けるカメラマンもまた凄い。この過酷な場所でずっとカメラでクライマーを追い続けるカメラマンの執念は並大抵のものではなく、その生々しい臨場感にくぎ付けになる。
また、とりわけ素晴らしいのは、ただクライミングシーンを追うだけでなく、それぞれの人物をつぶさに追い、葛藤や想い、喜びや苦しみ、といった感情が仲間とのやり取りを通じて、ひしひしと伝わってくることだろう。壁の中で誕生日を迎えたクライマーのために、バースデイケーキを作って祝うシーンは、胸にグッとくる。
ついにプロジェクトを達成して、クライマーたちが歓喜の声をあげるとき、思わず一緒に声を上げたくなるような感動が待っている。映像美やクライミングシーンの面白さはもちろん、様々な点でクライミングの素晴らしさに溢れた作品だ。クライミングに完全に取り憑かれた、世界レベルのクライマーの内面に執拗に迫る衝撃的な作品だ。(室井登喜男)