OVER40 in ピラニアに参加された選手・来場者の皆さんお疲れ様でした。
終始笑い声が途絶えない和やかな雰囲気の中にも、セッションの熱気と勝負の緊張感とがいい感じで混ざり合った良い一日でした。クライミングジム・ピラニア創設20周年にふさわしい、実に愉快で清々しいイベントにできたことを本当に嬉しく思います。
事の発端と裏話
OVER40をピラニアでやることになったのは、去年魚動でセットさせてもらった事に端を発しますが「魚動でやってるOVER40が面白い」という話は以前から聞いていました。ただ自ジムでそのまま丸パクリするのはちょっと芸がないということと、そもそもこれは魚動だから面白いのだろうと何となく推測できました。
魚動は独特の雰囲気をもっているジムだと思います。時代に流されない確固とした核があり、オーナーのJoeさんの人懐っこいキャラも素敵です。OVER40をやるなら本家の血筋を引く形でやりたいと思った理由がここにあります。
やると決まったらもうあとは一直線。スタッフとのミーティングにもいちいちワクワクしていました。
しかし実は今回、直前になっていくつもの予期せぬアクシデントに見舞われて、準備はかなりの綱渡りでした。それでもチームみんなの頑張りでなんとか舞台は整い、あとは開始の合図をするだけという朝のタイミングになって、音響を任せていたDJが会場に来ないという仰天事態が発生! 手持ちのミキサーもこういう時に限ってうまく動作せず焦り狂いました。結局BGMは諦めてマイクでMCだけを流すことにしたのですが、こんな時も「大丈夫。コンペはできます。」と、大人の対応で言ってくれた選手に救われました。
BGMなしのコンペというのは今時珍しいと思いますが、選手の息づかいや独り言、選手同士の励まし合い(けなしあい)、声援とヤジとが全部丸聞こえという、ある意味スーパーリアルな光景を見ることになりました。MCもBGM以上の大声を出す必要がないので落ち着いた雰囲気になるし、なんだか、これはこれで良かったような気もします。
勝負の行方
さて競技の方ですが、セッションの10課題は協賛ホールドの効果もあり(ピラニアにしては)いつになくゴージャスかつポップなルックス。コーディネーションやクラッチムーブなど、やたらと反射神経を試すような流行りの課題は酷だろうということで控えめでしたが、スラビーなジワジワ課題あり、エンデュランスピンチあり。水平カチ&ジャミング。凹角プッシュ+回転ムーブありと、バラエティは豊富だったと思います。Joeさんと(水口)ツッカーの課題もらしさ全開で出色でした。
ファンクラスは初めてコンペに出る選手も多く、緊張で硬くならないか少し心配していましたがスタート直後から怒涛の完登ラッシュ。飛び交う声援の中でハイになって登られているシーンもありましたね。セッション競技だけの予定が決着がつかず、タイブレーク方式で行なったスーパーファイナルだけは緊張感満点でした。結果1回目にゴールタッチまで到達した遠藤雅樹さん(岐阜)が文句なしの成績で勝利しました。
●50歳以上男子は予選から僅差の混戦模様でしたが、決勝でも誰が勝っているのかわからない大激戦。
運命の最終課題はジャンプ&ランディングムーブがあって、オブザベの段階で選手からは驚きの(もしくは文句)声が上がりましたが、4分で何とかなんとか順応してランディングしてしまうのがまたカッコよかったですね。しかし結局この課題では完登は出ず(幻の完登シーンはありましたが…)カウントバッグで青木実さん(東京)の優勝が決まりました。 少年のように軽やかに跳ねて登る青木さんのスタイルは、鈍臭くなりがちな我々に大きな希望を与えてくれました。
44人で競われた40代男子は、伊東ヒデさん(千葉)とクライミングジム・ステラのオーナー宇野鋭気さん(大阪)が全完登で予選首位。9完登の5人が追うドキドキの展開に。しかしこの後も2人のデッドヒートとなり決着は最終課題にもつれ込みましたが、最後は宇野さんが上裸になっての見事な完登で勝利を手にされました。強い! 伯仲の勝負は見応えありましたね〜
(ヒデさんは46歳だそうです。敗れはしたものトレーニングに裏打ちされた強さと、ここぞという場面の集中力はリスペクトです。)
女子は40代と50歳以上をひとまとめにして総合成績で競う形となりました。予選は抜群の安定感で9完登した小川真美さん(愛知)がリード。50代からはハヤリエこと早石利枝さん(長野)が決勝に駒を進めました。
決勝でも小川さんの強さは際立っており、爆発的な肩の力が必要そうな(個人的な印象です)第1課題を軽く料理すると、横綱相撲(例えがイマイチ…)の素晴らしいパフォーマンスで勝ちきりました。クライミング歴は9年とのことでしたが、普段どんなクライミングをされているのでしょう?
そういえば、表彰式が始まる前はベストドレッサー賞の授与と、優勝者のヒーローインタビューをしようと思っていたのですが、本番の進行ですっかり忘れてしまっていました。(忘れっぽいのもOVER40…) インタビューをするはずだった各カテゴリーの勝者の方は申し訳ありません。
またベストドレッサー賞の方は、ラウンドごとに新旧ステキな衣装直しをした上に決勝でも活躍された若林伸一郎さんにお贈りしたいと思います。のちほど副賞品をお送りします。
OVER40の意味
OVER40は若者がいない方が勝負になるから面白い訳ではないと思います。今回の選手のクライミング歴はまちまちでしたが、ボルダリングという同じ遊びが好きな円熟した人間が集うコンペに、これまでにない面白さと価値を感じたのは私だけではなかったと思います。
懐かしい顔ぶれとの再会はやっぱり嬉しいし、この歳で新しい知り合いができるのも嬉しい。初めて味わう緊張の体験や、大きな声援を一身に受けて登ることが嬉しかった人もいるでしょう。「俺はまだまだいけるぞ」という手応えが嬉しかった選手もいるはずです。私としてはジム同士の交流の中で産まれた小さな話を、ドラマとミラクルに満ちたコンペとして実現できたことが最高に嬉しかったです。
コンペはただ順番をつける競技会ではなく、ボルダリングという遊びと仲間のおかげで、自分の人生がどれだけ豊かになったかを再確認する機会として絶好で、OVER40の価値もそこにあるのだと思いました。
コロナ以降クライミングジムのお客さんは中年世代がすごく元気です。どなたも楽しくて仕方ないという顔をされています。私ももうすぐ50歳。可能性は無限大とは言い難いけど、学びと刺激を求めて行動し続けたいものです。
次のOVER40は何時どこであるかわかりませんが、その時までしぶとく登り続けてぜひまたお会いしましょう!!
(記 : 山森)
平均年齢と最年長
40歳代男子クラス = 43.8歳
50歳以上男子クラス =53.4歳
女子クラス = 45.9歳
ファンクラス = 49歳
最年長 = 61歳
最長クライミング歴 = 37年(2名)