ハローピラメイト epsode1 田原好文さん

ピラニアのお客様を毎月ご紹介していく企画「ハローピラメイト(仮称)」がスタートします。

目的も楽しみ方も多様かつ幅広い愛好者をもつクライミング・ボルダリングですが、この企画ではそれぞれご自身の楽しみ方でピラニアに通っておられるお客様を、スタッフとの対談を通じてその人となりをご紹介したいと思っています。

記念すべき第1回は、田原 好文(たはら よしふみ)さん。

非常に熱心なお客様のひとりで、63歳の今も上達を続けておられます。成長の秘訣、継続のモチベーションについてお話をうかがいました。


ピラニアとの出会い

田原好文さん

(聞き手:山森)ボルダリングを始められたきっかけと、その時の年齢を教えてください。

(田原)ここの会員になった時だから、何年だ? (会員証を確認する) 2005年! だいぶ前ですよ、石和で。僕が48歳か。妹の子供がボルダリングやってて、(県外のジムに)一緒に連れてもらった時すごく楽しくて。それで石和にもあるなぁっていうのと、やっぱり体重減らしたいな、体動かしたいな、軽くなりたいなぁっていうのがあって始めました。でも、そのときは週1回来るのがせいぜいだったと思いますね。

(山森)お忙しかったんですね。

(田原)仕事はめちゃめちゃ忙しかったですよ。

(山森)その時は単純に楽しいっていうので続けられたんですか?

(田原)楽しい楽しい。それだけ。

(山森)そこから東北へ転勤があったりして、転勤先ではたまに登られていたと聞いていますが、山梨に帰ってきてからもお忙しい状態は続いたんですよね?

(田原)そうです。だから、本格的に再スタートしたのが2019年の…7月か。現役を引退したあと6月くらいから週に何回か来るようになって。

(山森)そうでしたか。ボルダリングを再開するのではなく、他の遊びをするという選択肢はなかったんですか? もともとやっていたスポーツとか。

(田原)特にスポーツってのはやってなかったな。走るとか。体を動かすのは好きだったけど。

(山森)ゴルフは?

(田原)最近でもないね。転勤した時だから2007か2008年。東北で始めたからな。やることなかったし。

(山森)お偉いさんになるとゴルフをする印象があるんですけど、大きな会社では皆さんやってるもんなんですか?

(田原)ゴルフは最近安くなったけど、昔はゴルフってすごい高かったんですよ。1プレイ3万円とか。今は1万円弱くらいでもできるけど、サラリーマンのスポーツじゃないと思ってたから。転勤先では時間があったし、土日はゴルフすることも多かったな。ただまあ、ボルダリングもそうだけど、スポーツでもして体重とか体調管理したいなってのが逆にあった。楽しいのと同じくらい。

(山森)なるほど。それはお仕事もちゃんとやりつつ健康も両立したいと?

(田原)そうそう。両立させたい。

(山森)それは壮年期の共通的な悩みですね。

(田原)そう。良い仕事するにはやっぱり健康でないと。「心・技・体」とかよく言うけど、僕に言わせたら絶対に「体」なんですよね。身体が健康だからこそ良い仕事できるし、技も身につくし。心の健康なんか最後の最後ですよ。とにかく体が健康じゃないと良いアイデアも浮かばないし、と思ってます、はい。

楽しみ方とその成果

田原好文さん

(山森)現在のボルダリングの頻度はどれくらいですか? また他の趣味についても教えていただけますか?

(田原)ボルダリングは週に3回か4回。平均3回かな。2時間弱ですね。それは山森さんが2005年当時に、一度にバーッて(長時間)やるよりも、こまめに来たほうが上手くなりますよ、って言われたんですよ。

(山森)それは言った気がします。というか大体いつも言ってる(笑)

(田原)まぁそうなんだろうなあって思って。でも、もうこの歳になって長くやってると疲れちゃうし、ケガするのも嫌なんでね。いいとこ2時間から2時間半くらいかなぁと。

(山森)ゴルフはどのくらい?

(田原)ゴルフはラウンドに出るのは週1回あるかないか、ただ練習は行きますけどね。練習はボルダリングほどはやらないけど、こっちは週1回か2回くらいかな、打ちっぱなしね。

あとは毎朝、走る、というか歩く。1時間弱ね。よく8,000歩っていうじゃないですか。今(朝歩くのは)7,000歩くらい。僕のジョギングペースで40分くらい。4-5キロかな。雨の日以外はそれがルーティンワークになってますね。

(山森)ボルダリングがどれくらいご自身の健康に役立ってると思いますか?

(田原)上半身の筋力と体幹は強くなったと思いますね、やっぱり。

姿勢も良くなったかな。たまに大きい鏡を見るんですけど、疲れてると猫背になっちゃうじゃないですか。くっと胸を張って歩きたいんですよ。姿勢よく歩くには体幹は必要です。

上達の秘訣とモチベーション

(山森) : 田原さんはお一人でも熱心に課題に取り組まれている姿をよく拝見しますが、インストラクターの立場から言うとボルダリングは一人では上達が難しいスポーツだと思います。一人で黙々と登りながら、着実に上達できる人はほぼいないと思っています。

(田原)あぁ、そんなもんかな。

(山森)はっきり言うと、一人だと上達しないままになってしまうか、辞めちゃうかですね。

(田原)辞めちゃいますよね。わかるわかる。すごくよくわかる。

(山森) その中で田原さんはお一人でどうやって続けながら上手になっていかれたか、その秘訣というか理由を教えてください。

(田原) 自分の中のイメージとして、高校の時代がすごく活動的だったんですね。体重が58kgで。で、そのときの心の持ちようとか、体のしなやかさ、軽さをもう一度とり戻したいという気持ちはすごくあるんです。

今、体重と体脂肪を毎日測ってるんですけど、3年前に(ボルダリングを)再スタートしたときは体重も重くて。まぁすごく仕事が忙しいかったのもあって、体脂肪率も結構あって。それで目標を立てました。今はその目標に近いんだけど。

(山森)今どれくらいですか?

(田原)体重は58kg。体脂肪率は12%くらい。身長は175cm。

(山森)そうすると、BMIでいうと20を切ってますかね。

(田原)ああ、切ってます。19くらい。

(山森)それはすごいですね。

(田原)だからそれを維持したいな、と。登ればそれ(体重)がわかるから。「今日は重いなぁ」とか。まぁ、疲れも登ればわかるし、そうするとまた節制する気になるじゃない。

(山森)ということは、体調のバロメーターとしてボルダリングが役立ってると。

(田原)そうそう。でもまぁ、あとは楽しいからですよ。楽しくないと来ないもん(笑)

(山森)なるほど。楽しいからこそ続く。で、続けていればまた体も調子良くなるし、登ることで毎日の変化を感じてらっしゃると。それは良いモチベーション維持の方法ですね。

ピラニアに通う理由

(山森)さっき少し話に出ましたが、ご家族で登られることもあるようですが

(田原)妻と娘と息子。娘は二人いてその結婚相手も。まぁ僕が誘ったんだけど。

(山森)ご家族はどんな反応ですか?

(田原)「楽しい」「やりたい」って言ってますよ。娘なんかは毎週来たいって。今は東京に行っちゃったけど、向こうでもやってるんじゃないかな。まぁ、僕が一番うまいけどね(笑)

(山森) 入れ込みようが違いますからね。

(田原) そうそう。

(山森) 都内には沢山ジムもありますしね。山梨だと2003年当時はピラニア含めて3つしかなかったのが、今では公共施設を含めると8施設かな、あります。その数あるジムの中でピラニアを選んでいただいている理由は何でしょうか?

(田原) そりゃ山森さんがいるからですよ。ま、他のジムにもそんなに行ってないから分かんないんだけど、(ピラニアは)店員さんもそこそこ良いし。そこそこって言い方失礼だな。すごく良いし(笑) フレンドリーだし、色々教えてもらったりね。他のお客さんと話すのも楽しいし。そう、お客さんがね、いい人が多いと思う。

(ここでは)仕事とか経済の話なんか一切しないし、会社とは違う世界の趣味だけの時間を過ごせるのはいいですよ。あ、でも、突然来なくなっちゃう人がいたりするのは寂しいね。

(山森) そうですね。いろんな事情がおありだとは思いますが、今は近くに出来たからそちらに行かれる方も多いと思います。

(田原) そうね。まぁアクセスはあるよね。

(山森)私たちとしては少し遠くても「やっぱりピラニアに行こ」と思ってもらえる理由を作りたいと思ってるんですけど、特に意識してるのはふたつあって、ひとつは課題の質。うちの場合ルートセッターが何人もいて、今4人かな。課題のバラエティという点で一人では出せない個性を出していきたいな、と。

(田原)なるほど。

(山森)もうひとつは「人間味」ですね。

(田原)いいですねぇ。

(山森)スタッフはそれぞれのストーリーを持ったクライマーなんですけど、メンバーが互いに尊重し合うことで個性を損なわないようにすると、人間味というか持ち味がでるかな、と。まぁ、そこまで皆さんに感じていただいているかはわからないんですが。

(田原) いやいや、出てますよ。うん。

(山森)できればそれを感じてもらって「あ、ピラニアはやっぱいいな」という風に思ってもらえたら嬉しいです。もし田原さんがうちのスタッフにご要望があればお伺いしたいところですが。

(田原)そうねぇ… (しばらく考える) 茜さんとか、タクマさんとかはここでよく会うけど、僕は皆さんとすごく良い距離感かと思います。(登り方で)困ってる時は向こうから声かけてくれたり、僕も「ここどうすんの?」とか聞いたりしてるし。そう、距離感はすごく好き。

(山森)聞きやすいですか?

(田原)うん、聞きやすい。スタッフの人がその辺にいてくれるじゃないですか。いつも。そう、距離感が僕としては居心地が良いんです。あんまりベタベタもしないし。

(山森)ベタベタ (笑)

(田原)あーだこーだと言われるのもね(苦笑)。あるじゃないですか、そういうの。

(山森) ええ、わかりますよ(笑) まぁ、親切のつもり、ということなんでしょうけど。

(田原)それはお客さん一人ひとり違うじゃないですか。話が好きな人もいるだろうし、一人静かに登りたい人もいるだろうし。ここの人(スタッフ)はそういうのをちゃんと見極めてるというか、分かってるなと思います。

(山森) そこまでの社員教育はしてないですけどね(笑)

できないことができる瞬間が嬉しい

田原好文さん

(山森) えっと、ここで田原さんのご自慢あればぜひお聞かせいただきたいんですが。

(田原) 自慢っていうのは無いけど、(ボルダリングを)再開して、2019年は5級が登りたいと思って頑張った。で去年(2020)年はなんとか4級が登れて。で、今年は3級。全部登れてないけど、3級に手がかかりはじめて。

(山森)コンスタントに登れてますよね。

(田原)2級のひとつでも登りたいなぁとか。

(山森) おおー!

(田原)あ、でも2ヶ月くらい前に簡単な2級が初めて登れたかな。すっげー嬉しかった、あれは。

(山森) 今でも成長は続いてます。

(田原)成長かどうかは知らないけど、あとはあれかな。できないことができるってのが嬉しい。ほら、コーディネーションっていうの? 飛んだり跳ねたりするの見て自分じゃ絶対できないと思ってたんだけど、と言うかやんなかったんだけど。

石和店の4級のコーディネーション課題ってのをやってたら、ある時パッとできちゃったんだよね。そういうのはすごく嬉しいね。

(山森)それはよくわかります。諦めちゃそこでおしまいですからね。

(田原)そうそう。

(山森)それと、意外に人間て能力を一生伸ばし続けられるんだなと思ってまして。20代のときなんかは50歳の身体の感覚は想像できないから、そうなったら何もできないと思い込んでたんですけど、でも実際はそんなことはなくて、伸ばせることはいっぱいあるんですよね。おそらく筋力も根つめて(トレーニングして)いけば、どんどん伸びると思います。

(田原)そう思いますね。最近の理論だと筋肉だってちゃんと付けれるもんね。年とっても。まぁ、柔軟性は衰えるけど。

(山森)筋肉の質や量は落ちるけど、相対的には成長し続けていけると僕も思います。ボルダリングはその可能性を感じてもらえる遊びなのかなとも思うんですけどね。

(田原)はいはい。

(山森) 客観的なタイムが出るようなスポーツとかって、そのタイムを維持することがだんだんしんどくなっていくわけなんですけども、ボルダリングならテクニックでカバーできる。例えばコーディネーションなんかは動きですよね。それを改善というか体で理解できたら登れるし進歩するというところがある。

まぁ、筋力の衰えが他の要素でボヤけるっていう側面はありますけど、全体的にはずっと成長しているような感覚が得られる。そういうところもボルダリングの良い所だと思います。

(田原)うんうん。

これからの目標

「継続は力なり」の色紙

(山森) えっとインタビューも終盤になりました。もうすぐ64歳といわれましたが、今後どのようにボルダリングをつづけていきたいか? 目標や期待をおしえてください。

(田原)とりあえず3級。65際までには2級もちゃんと登れるようになりたいと思ってる。

(山森)65歳で3級・2級をコンスタントに登れるという人は相当少ないと思います。周りではほとんど知りませんね。すごい挑戦だと思います。

(田原)挑戦ていうほどじゃないけど(笑) あとは健康。ケガをせずに続けることが目標。そうそう、石和(の更衣室)に貼ってあるじゃん「継続は力なり」っての(色紙)が。

(山森)はは。あれは知り合いの書家に頼んで書いてもらったんですけど、自分の座右の銘のひとつです。

(田原)昔からずーっと貼ってありますよ。正にあれだな、と思ってます。

(山森) ありがとうございます。質問は以上になりますが、この機会に言っておきたいことがあればぜひ。私たちへの要望とか質問でも何でも。

(田原)これから店はもっと増やすの?

(山森) え? いや、無理です(苦笑) 市場環境も昔と違いますからね。

スポーツの持つ社会的な役割というんでしょうか、これからの日本では変わっていくと思ってまして。ちょうど今はオリンピックの後で、クライミングは競技スポーツとして注目が集まってるタイミングなんですけど、私が思うに今後も競技の方向というか、アスリートがメダル幾つ獲ったとかの勝利至上主義みたいな発展をするとは思えないんですよ。

逆に超高齢化が進む日本だと、スポーツは健康だとか…幸福、かな。幸福の増進のためにみんなが楽しめる「遊び」という役割の方が大きくなると思うんです。その中でボルダリングってすごく手軽じゃないですか。

(田原)はいはい、手軽!

(山森) 手軽な上に続けると体にも心にも良いことがいっぱいある。なので、我々(ジムスタッフ)がそこまで連れていけるか(サポートできるか)っていうことだと思います。続けるメリットをちゃんと認識してもらえるようなサービスか結構重要というか。

(田原)わかる、わかる。ここへ来て楽しんでこそ続く。登る以外のことも楽しんで、何かプラスアルファもあるといい。他のスポーツとの差別化をどうするかなんでしょうけど、僕の場合は店員さんの質だったり、課題の面白さだったり、(求めることは)人によって違うんだろうけど。

(山森)今ピラニアはどうやって(楽しむことを)続けてもらうか、いつも考え中です。

(田原)まぁ試すしかないよね、悪手でも。やめりゃいいんだから、ダメなら。

(山森)毎月のミーティングで色んなアイデアを出しては試してるんですけど、やったことないサービスとか、初めての仕事は億劫というか、積極的ではないときもあります。そこで僕がどうリーダーシップを取っていくかというのは、ひとつテーマですね。

(田原)そうだよねー。わかる。

(山森)田原さんにも、その辺のことについてアドバイスいただきたいくらいです。

(田原)顧問料は(ムーブを)教えてもらうのでいいや(笑) でも、会社理念は作られたんだよね?

(山森)はい、作りました。コアバリューの中でも「健康」ということは謳ってます。でも一番大きなバリューは「岩登りを最高の遊びとする」ということなんです。

(田原)ああ、なるほど。いいですね。

(山森)「遊び」っていう言い方が私は好きで、これ(クライミング)ってスポーツというよりも遊びの感覚なんですよ。しかも、優れた遊び。年齢とか性別とか、体格とか体力とか一人ひとり違うなかで、どんなレベルに居ても面白いっていうのが「優れた遊び」の条件のひとつだと思うんです。これはボルダリングだけでなくて、他の遊びもそうですけど。

ボルダリングなんて、シューズひとつあればだいたい同じ条件に立てるじゃないですか。なので、ボルダリングの優れている所をもっと社会の中で役立つものにしたいと思って、会社理念を作るときに「価値」として入れたんです。

でもそもそも、真面目に遊べる大人って、カッコいいし、健康だし、いつまでも若々しいはずだと。

(田原)はいはい、それわかる。

(山森)だから私からすると、田原さんはすごくカッコいい大人なんです。

(田原)はっはっは。 (照れながら)  まぁ好きなんだよねぇ。ありがとうございます。


2021.9.9 ピラニア南アルプス店にて

  • mainbanner
  • mainbanner03
  • mainbanner05